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[不動産の本棚] 品川猿(村上春樹『東京奇譚集』より)

カテゴリ:不動産の本棚



 地名と動物名との組合せが、その土地を縄張りにする「地回り」の通り名とされるのは昔も今も変わりません。
 時代劇なら壬生狼(新撰組)、小説なら『新宿鮫、そして今回ご紹介する村上春樹なら「品川猿」がそれに当たりま…と言いたいところですが、そこは世界の村上春樹だけあって、本作でもハルキワールド全開です。

 新潮文庫の『東京奇譚集』という村上春樹氏の短編集に収められているこの作品。何気に文庫版の表紙を飾っているのが、そう、まさに品川猿です。

 短編だけにここであらすじを語ってしまうと殆どネタバレしてしまうため控えますが、タイトルからして「品川猿」というだけありこの小説、登場人物が皆、品川区の関係者です。(※ちなみに村上春樹さんご自身が品川区にお住まいというわけではありませんので、念のため。)

【主な登場人物】

・安藤みずき(旧姓・大沢みずき)
 本作の主人公。1年ほど前から、自分の名前が頻繁に思い出せなくなるという現象に悩まされている。(※ちなみに勤め先は大田区のホンダプリモらしいですが、不動産屋としては、東急線ユーザーなのか都営浅草線ユーザなのか気になるところ。)

・安藤隆史
 みずきの夫。製薬会社の研究室勤務。品川区にローンで新築マンションを買い、みずきとともに暮らす。作中ではみずきの回想シーンのみに登場。

・坂木哲子
 品川区役所で「心の悩み相談室」を主催するカウンセラー。みずきが偶然彼女のもとを訪れたことで、事態は大きく動き出す。

・坂木義郎
 坂木哲子の夫。品川区役所で土木課長を務める。品川愛が人一倍強い模様。

 身内である私が、こんなことを申し上げるのもいかがと思いますが、家内には普通の人にはない、何かしらとくべつな能力が備わっているのです(中略)ですからこそ、この区役所内に『心の悩み相談室』を開設するように、ずいぶん熱心に働きかけて参ったわけです。彼女の能力を発揮できる場所をこしらえてやれば、必ずや品川区民のお役に立つに違いないと確信しておったからです。
(引用:村上春樹「品川猿」、『東京奇譚集』収録、新潮社[新潮文庫]、2007年、P234-235)

・桜田
 坂木義郎の部下。空手使いの偉丈夫。やたら猿を罰したがる人。

 念のために、こいつだと一目で見分けがつくように、焼き印を尻に押しておきましょう」と桜田は言った。品川区のマークをつけられる工事用の電気ごてが、どこかそのあたりにあったと思います
引用:村上春樹「品川猿」、『東京奇譚集』収録、新潮社[新潮文庫]、2007年、P239)

品川猿
 本作の最大の謎にして核心。高輪の地下に仮住まいを作りながら、下水道づたいに活動しているらしい。


 枚数にして64頁ほどの本作ですが、事態の急転する中盤以降はなかなか、ショッキングな展開が連続します。(筆者は予備知識なしで読むこと機会に恵まれたため、「え!この小説、死人が出るの?!」「え!この猿、×××(伏せ字)できるの?!」といいように翻弄されました。)
 そして最後に暴かれるみずきの秘密とは何なのか。自分の名前を取り戻したとき、彼女は一体どんな人間になってしまうのでしょうか?
 短編ながらも、読後、そこかしこに埋められた作者のメタファーを探っている自分に気付いたとき、それはきっとあなたもハルキワールドに捕えられた証しだと思います。ハルキストならずとも、品川在住・在勤の方にもお薦めの一冊です。


取材・文/TN(HN)
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